遅延(Ping)と帯域の違い
帯域(Mbps)は回線が1秒間に運べるデータの量で、遅延はデータが往復するのにかかる時間で、ミリ秒単位のPingで表されます。対戦型のオンラインゲームなら50 ms未満、クラウドゲームはNVIDIAによれば最寄りのデータセンターまで80 ms未満が必要で、通話はITU-T G.114の指針に沿って片方向の遅延を150 ms未満に抑えるのが目安です。
用途ごとの遅延の目安
| 用途 | 目安 | 出典 |
|---|---|---|
| クラウドゲーム(GeForce NOW) | 最寄りのデータセンターまで往復80 ms未満 | NVIDIA |
| 対戦型のオンラインゲーム(シューター、格闘、レース) | 50 ms未満。100 msを超えると体感できる | 当サイトの目安 |
| ビデオ通話・音声通話、ライブ配信 | 片方向の遅延150 ms未満 | ITU-T G.114 |
| 動画視聴、Web閲覧、ダウンロード | 影響を受けにくい。プレーヤーが先読みする | – |
片方向と往復の違いに注意してください。スピードテストのPingは往復の値です。ITU-T G.114は片方向の遅延について述べているので、行きと帰りにほぼ同じ時間がかかる一般的な経路なら、片方向150 msはおよそ往復300 msにあたります。通話はゲームより寛容で、厳しい上限が必要なのはゲームのほうです。
Mbpsを上げてもPingが下がらない理由
帯域は大量のデータがどれだけ早く届くかを決め、遅延はそもそも何かが届くまでの早さを決めます。ゲームの更新データや通話の音声は小さなパケットなので、1つを回線に送り出す時間は、どのプランでもごくわずかです。
送出時間 = パケットのビット数 ÷ 回線速度 100 Mbpsで1,500バイトのパケット = 12,000 ÷ 100,000,000 = 0.12 ms 1000 Mbpsで1,500バイトのパケット = 12,000 ÷ 1,000,000,000 = 0.012 ms
100 Mbpsから1ギガに上げても、パケット1つあたり約0.1ミリ秒縮むだけです。Pingが40 msのゲームは、やはり40 ms近いままです。残りの遅延は別のところから来ています。
- 距離。信号が伝わるには時間がかかるので、海外など別の地域にあるサーバーは、どのプランでも取り除けない遅延を加えます。
- 経路。事業者がゲームや通話のサーバーまでたどる経路は、直線距離より長いことがあります。
- 接続方式。アクセス回線の方式によって、通信が地域の外に出る前に加わる遅延の大きさが異なります。
- 家の中のネットワーク。Wi-Fiや混雑したルーターは、遅延とそのばらつきを増やします。
- 待ち行列。回線がいっぱいになると、パケットは順番待ちをします。これが後述のバッファーブロートです。
対戦シューターでは、Pingが15 msの50 Mbps回線のほうが、Pingが120 msの1ギガ回線より快適に感じられることがあるのはこのためです。回線が実際に運んでいる量を測るなら、どんな転送でもMbpsに直せるスループット計算ツールを使ってください。
ジッター:Pingが安定しないとき
ジッターは、パケットごとに遅延がどれだけばらつくかを示します。安定した60 msのほうが、20〜150 msのあいだを行き来するPingより扱いやすいことがよくあります。通話アプリは小さなジッターバッファーに音声をためてばらつきをならしますが、その分だけ遅延が増えます。ばらつきがバッファーを超えると、声がロボットのようになったり途切れたりします。ゲームでは、キャラクターが引き戻される現象(ラバーバンド)や、当たったはずの攻撃が当たらないといった形で現れます。主な原因はWi-Fiの干渉と回線の飽和です。
バッファーブロート:アップロード中にPingが跳ね上がる理由
ルーターやモデム(ONU)は、回線が送れる以上のデータが来るとパケットを待ち行列にためます。この待ち行列が大きいと、混雑した回線では大きな遅延が加わります。誰かがクラウドバックアップを始めると上りが埋まり、それが続くあいだ全員のPingが跳ね上がる、というのが典型です。多くのプランでは上りのほうが小さいため、原因はたいてい上りです。
確認するには、回線が空いているときのPingと、スピードテスト中のPingを比べます。最近のスピードテストの多くは、待機時の遅延に加えて負荷時の遅延も表示します。負荷時の値がずっと高いなら、次のことを試してください。
- ルーターにスマートキュー管理(SQM)などのQoS機能があれば、オンにする。
- バックアップや同期アプリの上り速度に上限を設けるか、夜間に実行するよう予約する。
- 必要な回線速度の計算ツールなどで、家族が同時に送信する量とプランの上り速度を照らし合わせる。
有線とWi-Fi
Wi-Fiは、すべての機器と近隣のネットワークで電波を分け合い、失われたフレームを再送し、距離や壁で速度が落ちます。そのすべてが遅延を増やし、特にジッターを目立たせます。LANケーブルならこれを避けられます。ゲーミングPCやゲーム機、一日中通話に使う机には、ケーブルでつなぐのが最も確実な対策です。どうしてもケーブルが使えない場合は、端末をルーターやアクセスポイントの近くに置き、使えるなら5 GHz帯や6 GHz帯につないでください。
遅延の測り方
- Fast.comやSpeedtestなどのスピードテストを、有線の端末で行い、次にゲームや仕事をする部屋のWi-Fiでも行います。
- 待機時のPingと、表示されれば負荷時のPingを記録します。
- クラウドゲームなら、データセンターまでの経路を測るサービス独自のネットワークテストを使います。
- 数値をスピードテスト判定ツールに入力すると、100 msを超えるPingが指摘されます。
要点まとめ
- 帯域は容量、遅延は待ち時間。この2つは別物で、プランは帯域で売られている。
- 対戦型のゲームなら50 ms未満、GeForce NOWのクラウドゲームなら80 ms未満が目安。
- 通話はもっと寛容で、ITU-T G.114は片方向150 msを上限としている。
- 100 Mbpsから1ギガに上げても、パケット1つあたり約0.1 ms縮むだけで、高いPingは直らない。
- ジッターとバッファーブロートは通話やゲームの不調のよくある原因で、有線接続と上り速度の制限が効く。